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わたし達は、ホテルのベッドに並んで腰掛けていた。
静かな薄暗い部屋の中で、心臓が大きく脈打って、相手に聞こえてしまいそうな錯覚に陥る。
遂に……来てしまったけど……どうしよう。
黒澤くんがジャケットを脱いで、ベッドの脇の椅子に放った。
そして溜息を吐く。そんな仕草ひとつ取っても、色っぽい。
僅かに頬を染めて、わたしの方に向き直る。
わたしの顔は真っ赤に染まっているだろう。
黒澤くんの手が、わたしの顔へと伸びる。
耳の辺りに指が触れ、微かに身体を震わせた。
まるで初めて触れられたかのように、胸が痺れて、高揚している。
黒澤くんの端正な顔が、近付いて来た。
目の前で瞼が伏せられ、長い睫毛が目に映り込んだ。
わたしもそっと目を閉じる。
甘くて優しいキス。
何度も何度も、離れては触れる唇。
次第に深く濃くなってゆく。
舌で奥の方まで弄ったり、舌先で触れ合ったり。
黒澤くん、すごくいやらしい……。
息が荒くなって来る。
黒澤くんが段々とわたしの上に倒れ込む。
わたしは少し彼の胸元を掌で押して距離を取り、やっとのことで喋った。
「……あの、シャワーとか……」
「いいよそんなの」
黒澤くんは短く答えて、再びキスを落とした。
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