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気付いた時には終電間際で、諦めてその夜はひとりでホテルに泊まった。
ベッドの中は、微かに黒澤くんの匂いがする気がして、その度泣けて来た。
あまり眠れなかった。
朝早く、家へ帰った。
土曜日の6時なのに、お母さんは起きていて、わたしを横目で睨んだ。
「不良娘~。……なんちゃって~ねねっ、彼氏出来たの!?」
「…………ふられた」
嬉々として顔を輝かせているであろう様子が目に浮かんだが、そんなお母さんとは目線を合わせず、小さく呟いた。
そのまま階段を登った。
「えっ……ちょっ、一千果? うそ!?」
少しはホテルで眠ったけれど、目覚めれば現実に引き戻される。
うとうとと微睡んでいる間は、昨夜の出来事はまるで夢か何かだったかのように思えるけれど、頭が冴えて来るとはっきりと思い出す。
わたしの手を払った、冷たい黒澤くんを。
その感触を。
また涙が溢れて来る。
そして、気付く。
今の状況はわたしが恐れていた事態であることに。
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