いつかやって来るその時

4/12
前へ
/218ページ
次へ
「……今日は、何だか苦い気がする」 「そう? そりゃあキャラメルだから多少は」 何だかわたしの心の様相を反映しているかのように思えた。 黒澤くんが頭に浮かぶ。 そして、黒澤くんにとっては、こんなお母さんの存在が覆ってしまっていることも、思った。 黒澤くんは今何をしているだろう。 どんな気持ちで過ごしているだろう。 もうどうにもならないのかな……。 結局日曜日もぼんやりと過ごしてしまい、月曜日を迎えた。 本当に仕事に行きたくなくて、朝しばらく布団から出られなかった。 無理矢理布団を引き剥がした後も、ずっと緊張感を纏ったまま準備をして、会社へ向かった。 いつもより少し早めに会社に着いてしまった。 顔を合わせるのが気まずくて、トイレに寄ろうかエレベーターホールで迷っていると、部屋のドアが開いて人がこちらへ向かって歩いて来た。 黒澤くんであることに気付き、動揺し始めた心を必死に落ち着かせる。 わたしに気付いて顔を上げた黒澤くんが、穏やかな微笑みを浮かべた。 「おはよ」 「……おはよう」 わたしの横をすり抜けて去って行く。 ……普通……? そう感じたけれど、何となく違和感も残った。 仕事が始まっても、普段と何ら変わりないような態度に思えた。 わたしだけが動揺しているの……? 黒澤くんは、あの夜のことをどう思っているの? そのまま昼休憩を迎え、黒澤くんはいつものように部屋を出て行った。 そして45分くらい経った頃、男の人と一緒に帰って来た。
/218ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4297人が本棚に入れています
本棚に追加