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「……今日は、何だか苦い気がする」
「そう? そりゃあキャラメルだから多少は」
何だかわたしの心の様相を反映しているかのように思えた。
黒澤くんが頭に浮かぶ。
そして、黒澤くんにとっては、こんなお母さんの存在が覆ってしまっていることも、思った。
黒澤くんは今何をしているだろう。
どんな気持ちで過ごしているだろう。
もうどうにもならないのかな……。
結局日曜日もぼんやりと過ごしてしまい、月曜日を迎えた。
本当に仕事に行きたくなくて、朝しばらく布団から出られなかった。
無理矢理布団を引き剥がした後も、ずっと緊張感を纏ったまま準備をして、会社へ向かった。
いつもより少し早めに会社に着いてしまった。
顔を合わせるのが気まずくて、トイレに寄ろうかエレベーターホールで迷っていると、部屋のドアが開いて人がこちらへ向かって歩いて来た。
黒澤くんであることに気付き、動揺し始めた心を必死に落ち着かせる。
わたしに気付いて顔を上げた黒澤くんが、穏やかな微笑みを浮かべた。
「おはよ」
「……おはよう」
わたしの横をすり抜けて去って行く。
……普通……? そう感じたけれど、何となく違和感も残った。
仕事が始まっても、普段と何ら変わりないような態度に思えた。
わたしだけが動揺しているの……?
黒澤くんは、あの夜のことをどう思っているの?
そのまま昼休憩を迎え、黒澤くんはいつものように部屋を出て行った。
そして45分くらい経った頃、男の人と一緒に帰って来た。
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