第3章・太陽の護符

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 渦巻く雲の砲台は光の球体を発射すると、軌道を飛行機雲に残して崩れ去り、屋上の天文台から慶次と愛犬シリウスが望遠鏡を覗き込んで、首都の各地に落下した十二地点から炎と煙を噴き出すのを観察する。  その一箇所である中央区の私立中学校のグランドで、美鈴と想作がバージョンアップしたおっさんのジョーカーと対峙していたが、慶次がその事を知るのは数時間後の事であった。 「想。また逃げんだよね?」  美鈴が焼け焦げた芝生を上履きのズックで踏みしめ、ブカツとボーダーチームから逃走したように今回も同じ作戦かと嘆いたが、想作は意外な言葉を発した。 「いや、戦って叩きのめす」 「ま、マジで?」 「俺の元彼女がパンツ奪われて、黙認する訳にはいかない」 「話しの流れが変だと思うけど、勝算はあるの?」 「もちろん。俺たちもバージョンアップしてるからな」  美鈴は想作の横顔を見て、変な奴だけど時々カッコいい所もあると複雑な心境だった。呼び捨てにするのはやめて、普通に君付けて呼んでみる。 「想くんの図形が変わってるよ」  蛍光ペンで白丸の痣を中心として描いたソロモンの印が逆三角形に刻印され、角の先端に文字が書いてあった。 「鈴には正三角形に三つのヘブライ語の文字。自分は逆三角形だな……」  想作は自分の左頬の刻印を指でなぞって読み取り、実験が成功したかのように笑みを浮かべた。 「潜在していた最強の組み合わせが発現した。逆三角形は男、正三角形は女を意味し、二人の三角形を合わせると割符のようにソロモンの図形になり、スペルがつながる」 「まったく、意味不明なんですが」 「AL ShDI(エル シャダイ)。神の名だ」
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