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「あんたさぁ、アタシのこと嘆くよりさぁ、その命、アタシが命かけて守ったんだから、大切にしなさいよ」
相変わらず、呆れたような調子で。
でも、それは、いつも私を気遣ってくれた、優しいお姉ちゃんの声だった。
「うん……」
泣きながら、でも、絶対にちゃんと生きる、と心に誓う。
でも。
「怒らないの?」
「……怒ってたら、わざわざあんたの望みなんか、聞きに行かないよ」
ちょっとだけ、ひねくれた表現。
どうして?
お姉ちゃんだって、生きたかったよね?
こんな言葉が、私の心に浮かんでくる。
「アタシ、別に後悔なんてしてないからね。あんたがちゃんと、幸せに生きてくれさえすれば、そのためにアタシが生きてたんだって、思えるんだからさ」
納得なんて、してない。
それでも。
私はうなずいた。
お姉ちゃんに抱きついて、泣いたまま。
どれくらい時間が経っただろう。
「ほら、いつまでも泣いてないで、そろそろ朝になっちゃうから、戻るよ? 送っていくから、しっかり生きなさい」
それでも、すぐには泣き止めない。
「まったく……アタシはずっとここにいるから。あんたのこと見てるからさ、ちょっと頑張って80年か90年か、生きてくればいいのよ。ほら、さっさと行くわよ」
私はあたりを見渡す。
まだ暗いけれど、お姉ちゃんには、朝になることがわかっているんだろう。
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