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人々は皆、透明な何かを一つずつ手にしていた。それは懐中時計であったり、身体の一部分であったり、継ぎはぎだらけのぬいぐるみであったり、動物や人を連れていることもあった。
モノは違えど、彼らの「失くしもの」は、純度の高いクリスタルのように、一点の曇りもなく清らかで透明だった。
僕はドレスの女性に尋ねた。
「皆、失くしものを探しに来たのですか?」
女性は目を細め、首を振る。
「失くしものは、落とし物ではないわ。だから、探しても出て来ない。私たちは、ナクシモノ桜を灯しに来たのよ」
「ナクシモノ桜?」
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