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結婚式を目前に、事故に遭ってしまった僕の身体こそが、僕が受け止めきれなかった失くしものだったのだ。
僕が恋人と歩むはずだった未来は、もう存在しない。
唐突に失われた未来をどう受け止めればよいのか分からずに、僕はずっと、さまよい続けていた。
僕は、ようやく理解した。
愛する人に、新しい未来を生きて欲しい。幸せになって欲しいと、切に願う。
その幸せは、僕のいない未来のどこかに、きっとあるはずだ。
胸がちりちりと痛む。
気がつけば、僕は微笑んでいた。
僕の微笑みもまた、静かでひっそり見えるに違いない。
ぽっ。
僕は消え、ちっぽけな桜が一つ咲いて、巨木を彩った。
おわり
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