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 初めての大学生活と一人暮らし。  やっと自分のペースを保てるようになったのは、秋学期が始まってから一ヶ月ほどしてからだった。  慣れない大学生活に加えて、食事や洗濯のこと、そしてアルバイト。  当たり前のことだけど毎日生活していく上で、全てのことを自分でこなさなくてはならないのは、思った以上に大変だった。  幸いだったのは、同じ高校だった友人が三人いたこと。そのうち二人とは学部も一緒である。  困った時に気兼ねなく頼れる友人がいてくれるだけで、随分気持ちは救われる。  大学に入って新しい友達を作るつもりがなかった俺は、彼らとつるむことがほとんどだった。  俺の通う山野大学は、近畿では四本の指に入るが、全国で見るとなんとか十番目くらいに入るレベル。  これといって尖った学部があるわけではないが、知名度はまあまあなマンモス大学である。  そんな大学の文学部に、俺はこの春入学した。  神奈川に住んでいた俺が、わざわざ実家を離れてこの大学に進学したのは、不純すぎる動機があった。  そんなことは死んでも親には言えない。
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