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 そもそも理系に進むはずだった俺が、高三になって志望校をいきなり私立文系に絞ったばかりか、関西にあるこの大学を受験したいと言い出した時は、周囲にはあまり理解されなかった。  特に母親には言葉の限り罵られ、一時は家庭崩壊の危機さえ感じたくらいだった。  母親の手前、関東主要私立大学にも出願はした。だけど親には内緒で合格通知は全て握り潰した。  母親は落胆して浪人をすすめてきたが、それでも俺は山野大にこだわった。  そんなどうしようもない俺を救ってくれたのは父親だった。  チビの頃から俺の考えを何かと尊重してくれた親父は、良い意味で放任主義というやつだった。  だから、この人生のわりと大事な節目でさえも、息子の判断にゆだねるよう母親を説得してくれたのだ。  困った時の救世主、親父はいつも俺の味方だった。
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