第二章 墜落イレブン

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 眠ることも、食べることも許されず、ひたすら性交を強要される。自分なら気が狂ってしまうだろう。 「そんなにおびえなくてもいい。女性の身体は、男性と違って連続したオーガズムに耐えられるのだからね……。それより、君にやってもらいたいのは妊娠実験だ。ちょうど今、排卵期だね?」  訊かれたことに反応するロボットのように芽衣はうなずいた。たしかに排卵日だ。刑務所に連れて来られた直後は生理が乱れたが、最近は安定していた。 「遺伝子操作をした我が国の運動能力の高い男子と交配させて、どのような子供が生まれるのか検証したい。知っているかな? 運動神経は母親から子供に遺伝しやすいのだよ。君はレギュラーメンバーではない。孕んでも親善試合に影響はないだろう」  目だけで老人の顔を見た。優しそうな笑みが返ってくる。みぞおちの辺りがすうっと冷えた。
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