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「ふふっ、可愛いなんて言ってもらっちゃって嬉しいわ。この子達も喜んでる。狐といえば狐。ちぃが飼ってるの、それ以上は言えないわ。この情報は非売品よ」
小さな額に見たこともない文字のようなものが赤く書かれている。キツネの幽霊のような生き物は、千歳が軽く手を振ると宙を浮遊する。
2人の頭上をグルグル旋回したり、見てもらえるのが嬉しいのか小紅の周りを回って楽しそうに遊んでいる。
慣れてしまえば可愛らしい姿につい手が伸びる。しかし「触れちゃだめよ」と言われれば慌てて手を引っ込め、しばし眺め癒される。
「――悪いけど、ちぃがこの子達を飼っていることとあなたが見えること、秘密にしておいてほしいの」
しばらくそうして癒されながら2人で話おしゃべり、主に千歳が知っている小紅のことについて話していた。
近づいてくる足音に「クロポンも戻ってきたし、ちぃは帰るわ」と千歳が立ち上がる。狐モドキは外に出て見えなくなる。
「やぁ、待たせちゃったね。桜鬼は落ち着いて、ぐっすり眠っているよ。押し付けて悪かったね、今度油揚げをご馳走するよ」
「んふっ、楽しみにしてるわ。じゃあまたね」
嬉しそうに舌なめずりをした千歳は手を振って、腕の中に子猫を抱いて去っていった。いやいや、待て。その子猫、ずっと抱いていたがちゃんと猫丸に返すんだぞ。
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