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重苦しい空気、沈黙の中で黒鷹はあえて「この話は終わり」だというように声を明るく大きくした。それに合わせるように客人の女も、空気を元の軽さに戻す。
千歳と呼ばれていた、見知らぬ女性が小紅の肩を押して黒鷹が去っていった方へと歩かせる。
逆らうこともできず、小紅は虫の居所が悪い和鷹にペコッと頭を下げて彼の部屋へと向かった。金属、小判か古銭の音が聞こえてきた。
和鷹達は大丈夫だろうか?と大変心配になったが、小紅が思いつめたところで何か改善されるわけでもない。
諦めて、障子が開いている部屋に足を踏み入れるとやっと千歳が離れた。用意されていた座布団に腰を下ろし、懐から子猫を取り出す。
って、その子猫はもしや猫丸の子猫では?まさか勝手に拉致してきたのか!?
「はいこれ、今回の情報の報酬。と、いつもの代金ね。次はもう少し多めに持ってきておくれよ」
「まいど。効きが悪くなったの?効かないからって勝手に飲み過ぎたらかえって具合が悪くなるわよ。ほどほどに、ね?」
おそらくは少なくないであろう金が入っている巾着を千歳に渡す黒鷹は「はいはい」と苦笑をこぼし、千歳の隣に座る小紅に目を向ける。
「何も気にすることはない。君は君が思うようにしていればいいさ。そんなことより、こいつが約束の時間から3刻も遅刻した情報屋の千歳だよ」
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