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「2刻よ、馬鹿。ちぃは誰の味方でも敵でもない、何でも知っている情報屋。知りたいことがあれば報酬次第で何でも教えてあげるわ」
歳は黒鷹と同じくらいか、大人の女性の色気を感じる。とても長い茶色の髪は1つにくくって防寒具のように首に巻いている。
黄色の瞳が黒鷹を睨み付け、白く細い指でデコピンを食らわせばフワリと甘い香りがした。
「先に言っておくけど、ちぃは普通の人間じゃないから。特別な方法で情報を仕入れているの。だから、小紅ちゃんがそこの奥の奥に潜ませているものの正体も知っているわ」
ではどんな人間なのか。素晴らしい音を響かせて黒鷹の額に赤い痕を残した指が、スッと小紅の胸を指さす。
普通の人間ではない情報屋。ありとあらゆることを知っている特別な情報屋。本当に、小紅の決して口に出すことは許されぬ秘密を知っているのか?
確かめることは、できない。小紅にその勇気はない。ただ、彼女は本当に知っていると本能がそう言っている。ドクンッと心臓が跳ねた。
「……その情報は、見合った報酬が支払われると誰でも知ることができるんですね。黒鷹様でも」
声が震えた。小紅がどんなに頑張って隠しても、千歳から知られる可能性だってあるのだと。彼女は静かにうなずき、黒鷹に目を向ける。
「でもクロポンに買ってもらうのは無理無理。この情報は特別、お金でどうにかなるものじゃないわ。そうね、クロポンなら、そうねぇ…………ちぃがまだ知らないクロポンの秘密を教えてくれたらかしら?」
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