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が、どうやら千歳が話したかったことはそのことではなかったらしい。「え?」と黄色の目をパチクリさせ、自分の胸に目を向ける。
「あ………………ふふ……うふふふふ、やだ、見えないように隠してたのに上がってきちゃってたのね。ごめんね」
肩を震わせて笑う千歳は見えている紙を押し込み、身を引いて座り直した。温かくて柔らかそうな胸の谷間にはもう、白い線さえ見えない。
「違うの。あれも本当は見えちゃいけないものだけど、ちぃが聞いたのはこっち。この子達、さっき来た時に目で追ってたわよね?」
そう言って千歳が手を出すと、袖の奥から白っぽい茶色の、細長い何かがスルッと出てきた。小紅をジッと見ている。
さっきの、千歳の胸よりも目が離せない。木の実のような赤いつぶらな瞳、千歳の手にしがみついている小さな前足、ピコピコ左右に動くとんがった耳。そして、胴体の後ろ半分がない。
ないというより、熱した飴を引き延ばしたように細長い尾を引いている。後ろ足すらない。
「き、狐の幽霊……」
「惜しいけど違うわ。やっぱりこれの正体までは知らないわね。まぁ、知らなくていいわ。見えているかどうか確かめたかっただけだから」
「普通の人には見えないんですね。幽霊も見たことないですし、霊感とかはないはずなのですが。でも、可愛いです。一応、狐なんですよね?」
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