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賑やかな町からはだいぶ離れたとある山奥に、まぁまぁ大きな屋敷がある。
お世辞にも立派とは言えないボロ屋敷に住んでいるのは、10人いるかいないかくらいのごく小組織。彼らは町で、良くも悪くも有名。
貧富の差が激しいこの時代、人の上に立つ大名が悪知恵を働かせ手に入れた金で私腹を肥やすのはお決まり。
そしてそんな大名に手を貸している一部の商人もまた、懐が温かい。その日の食事もままならないほど金に困っている町人なんてごまんといるというのに。
そんな、苦労もせず手に入れた金を大名達から奪い町の困窮者達にひっそりと分け与えている、義賊の真似事をしているのがこの屋敷の住人達。
彼らは他にも、政府の犬と呼ばれる新選組と仲が良い。あ、違う。喧嘩するほど仲が良い……
冗談冗談。事の始まりはわかっていないが、彼らは新選組を憎み争っている仲だ。とは言っても、毎日殺しにかかっているということもない。
毎日何かしらの悪戯、例えば新選組の大事な隊服の袖を全て縫い合わせて長い長い旗にしてみたり。外に置いていたゾウリを釘で地面に打ち込んで、履いた隊士がつんのめってこける様を大爆笑して見たり。
悪戯はきわめて子供っぽいのだ。というのも、彼らを取りまとめている頭領の青年の性格がそもそも子供なのだ。
度重なる義賊行為と度重なる過度の悪戯に新選組も黙ってはいない。彼らの根城はわかっているので不定期に奇襲を仕掛けているが、いまだに縛についたことはない。
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