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「あ、あ、あのっ……」
「おーい!皆手を止めて、こっちに集合してくれー!全員いる?あれ、あいつだけいないじゃん。しょうがないねぇ、あとにするか」
門から入ってすぐ、大量の木材を相手に奮闘している男達の元へと向かった青年は大きな声を上げた。
賑やかだった音がピタリと止み、この場にいる全員が顔を上げる。突然の来客に集まってきた5人は、ついに青年に嫁ができたのかと2人を交互に見やる。
「紹介するよ。今日からうちで住み込みで働くことになった……えーっと、誰?」
男達の期待なんて露知らず。青年はいつものように明るく、少女の肩を押して突き出す。突き出した格好のままジィーッと見つめて、首をかしげるとか拍子抜けだ。
「こ、小紅、です、初めまして。武術の心得はありませんが家事は得意です。できることは何でもやらせてください、よろしくお願いします!」
「小紅、か………………あぁ、紅ちゃんには僕の小姓になってもらうことにしたから、虐めないようによろしく頼むよ。じゃ、高遠から順に名乗ってやって?」
出会ってほんの少ししか経っていない。しかも手紙を持っているというだけで屋敷の中へ入れ小姓にするなど、5人の首を縦に振らせるにはいささか力不足。
5人が黙り込んでしまうほど、小紅という少女は怪しすぎた。見た目も、その震える体にまとう雰囲気も。
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