いざ、鷹の巣へ

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 こんな山奥のボロボロ屋敷にまでわざわざ、それも年若い女性が1人で雇ってくれと訪れるなど。普通の町人の娘ならば出来はしない。  少女のように若い娘でなくとも。いずれは新選組に召し捕られてしまうと未来がわかっている、小規模な義賊集団の仲間になろうなどと。彼らのように行き場をなくした者か、はたまたかわいそうに精神を病んだ者か。  青年が彼女から詳しい話を聞かずにここまで来てしまったのが悪い。少女は自ら、前者だと言っていたか。  なぜ彼らを頼るのか、金に困っているのか?前頭領とはどんなつながりがあるのか?せめてこれくらいは聞いておくべきだったな。  彼女自身、問われないのを不思議に思っているに違いない。さっきから戸惑うばかりで声が震えている。  前頭領の手紙は置いておいて。小紅がもしも裏のある人物だとしたらそれは、きっと新選組の間者である確率がきわめて高い。  もしくはそのもっと上、下手すればお上の直属の密偵か。この怯えようは演技のようには見えないが、果たして。  そろそろ本気で縛につかそうと、昨日の襲撃も作戦のうちだったりするのかもしれない。弱っているうちに小紅を侵入させ、部屋の配置や彼らの個人的な情報などを流してもらう。  そうして得た情報を元に確実に彼らを一網打尽にできる作戦を練り襲撃するのだ。  それが大いにあり得るのに、なぜ青年がのほほんとゆったり構えているのか、5人にはわからない。しばらくの沈黙ののち、しびれを切らしたある男が吠えた。
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