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目を開けるとそこには、懐かしい顔があった。
『…リョウ?』
目が霞んで良くは見えないけど、
ずいぶん昔に別れた人だけど、
間違える筈がない。
『久しぶり、ナオ』
声も多少老けたけれど。
『リョウ。…会いたかった』
『ナオ…、ごめんね?』
ごめんね、なんて言葉を聞きたかった訳じゃない。
でもそれを聞いて涙がでた。
『ナオに会えて僕は幸せだった。本当に』
『私もよ』
この人と過ごした日々が一番幸せだった。
『ありがとう』
呟くように言った言葉が
届いたかどうかは分からない。
薄れてゆく意識の中で、リョウの瞠いた瞳が昔のままだなと思ったのが、最後だった。
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