リョウ

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リョウの立場は微妙だった。 社長の弟の息子。 そして社長は息子がいなかった。 だがリョウの両親は憎み合って離婚しており、リョウは母親に引き取られて育った。父親とも定期的に会ってはいたが、母と結婚していた時から複数の女性と付き合っていた父親を好意的には見られなかった。 そしてリョウは母親のことも愛してはいなかった。 常に自分最優先で、そういう性格が父親に愛想を尽かされたというのも理解できないことはなかった。 伯父である社長はごく普通の良識ある男性で、幼い頃からリョウに同情してよく声をかけてくれた。 就職難の時代で、高校の頃から興味があれば自分の出版社に来いと言ってくれていた。甘えるつもりはなかったが、伯父が予備校の経営を始めたと知って興味が沸いた。 リョウは高校よりも予備校の講師達に恩義を感じていたタイプだった。 そして公立の高校には出来ないことを自由裁量でできる予備校は、もっと学生のために役立つ事が出来ると感じていた。 そうしてリョウは母親にも父親にも事後承諾で、伯父の作った予備校に運営スタッフとして就職した。
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