リョウ

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伯父の会社や予備校の社長とか代表になるつもりはなかった。 少なくとも最初は。 伯父には息子が、居たのだ。 ただ、リョウが就職した頃には精神を病み、入院していた。 そして自ら、命を絶った。 会社は世襲制と決まっていたわけではなかったが、代々創始者の一族が経営していた。 そうしてリョウに近い年代では、男は彼しか残って居なかった。 社長やその世代のいわゆる上層部の思惑は、リョウには直接伝わってこなかった。だからリョウは目の前の仕事に邁進し、ナオに出会って恋愛関係になり、 それは8年続いた。 リョウも30歳を超えていた。 ナオの父親のみならず、2人に結婚を促す人間は居た。 男のリョウには特に、責任を取るべきだと諭す友人や年上の同僚も居た。 けれども、リョウは結婚を望むタイプではなかった。 自分の両親を見ていたからかもしれない。 ナオが料理を好まず、子供好きにも見えないことで リョウはナオも結婚願望のない女性なのかと考えていた。 いや、そう思うことで逃げていたのかもしれない。
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