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高橋と見知らぬおばさんは、トイレへと向かっていった。
茫然と座敷を見渡す。
みんな楽しそうに笑っている。
なんで?
何も覚えていない。
こんなはずじゃない。俺は成功しているはずだ。
腹の底から、絶望と怒りが込み上げてくる。
「時間を返せ!」
俺は思わず口走っていた。
あてもなく一歩踏み出し、靴下と畳が滑って片ひざをついた。脚に力が入らず、俺は畳にゴロリとひっくり返った。
電灯を睨む。
「ふざけんな!納得できない!」
誰にという訳でもなく、俺は吠えた。
「こんなはずじゃない!俺の時間を返せ!」
ざわざわと声が聴こえる。
「なんだ?あゆむか?」
「まーた、ひっくり返ったか」
「歩、酒ぐせ悪いよな……」
「沙紀さーん!」
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目を閉じて開いても、現実は変わらなかった。
周りの笑い声が、取り残された俺を嘲笑するかのように響いていた。
38、歩、成らず。 終わり
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