第1章

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で── バスケの試合だった。 球技大会はあくまでもレクリエーションなので、試合時間は短い。そして本職の競技ではないから、どうしてもロースコアの接戦になる。 スコアは10対10。残り時間は1、2分。次の得点が決勝点になる可能性は高い。 相手のボール。 敵は攻めて手を欠いて、パス回しをしている。時間ぎりぎりまで使ってシュート一本決める作戦のようだ。 単調なパス回し。もう時間がない。 相手がパスを出す瞬間、俺は一か八かパスカットに飛び出した。このタイミングでないとパスカットは成功しない。早くパスコースに入りすぎれば相手はパスを出さないし、遅ければ届かない。パスを出す瞬間を狙うしかない。フェイントなら、守備のフォーメーションが崩れてピンチになる。が、パスがきた。 俺は懸命に手を伸ばす。指先がボールに触れ、ボールを前に弾いた。 こぼれたボールを俺は拾い、ドリブルに入る。 一機に攻守が入れ替わる。 歓声が沸き上がる。 後ろから相手の選手が追ってくる気配を感じたが、俺は冷静だった。 身体の真正面でドリブルをすれば、後ろから来ている敵は手を出せない。が、少しでもプレッシャーを与えて、シュートを失敗させようと、敵も諦めてはいない。 (来るならこい。最低ファールは貰える) フリースローは得意だ。友達とどちらが先に外すかなんて遊びを永遠とやっている。 俺はシュート体勢にはいる。レイアップシュート。相手がボールを叩きに来たら、くるりと手の向きを変え、ボールではなく手を叩かせてファールを貰うつもりだったが、相手は来なかった。 俺はリングを掴めるほど高く跳び、シュートを決めた。
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