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「なんだよ、それ……」
「よし。じゃ、行くわっ」
用を足し終え、たかしは便器を離れた。
「待って」
俺はたかしを呼び止めた。
この訳の分からない状況で出会った顔見知り、頼れそうだと思ったからだ。
たかしは返事をしなかったが、手洗い場で待っていてくれた。
「たかし、わりいな」
俺は手洗い場に行き、手を洗って鏡を見た。
そして、思わず叫んだ。
「ハゲてる!」
たかしは吹き出した。何を今更といった感じだった。
「イケメンくんも台無しだな。おごれる者も久しからず、盛者必衰のことわりをあらわす、か」
「どういうこと?なんでハゲてんの?」
「はははっ。どういう事って、38の人間なら別に普通だろ。犬なら病気かも知れないけど」
「38ってなんだ?本当に38なの?」
「……多分」
「18の頃から記憶が無いんだけど……」
「そうか?……まあ、確かに俺もあんまり記憶がないな。あっという間だったからな……ホンと時間が過ぎるのは早いわ」
「いや、そう言う事じゃなくて……」
俺は衝撃を受け、ハゲたことが受け入れられずに頭を眺めていたが、後ろの順番待ちの圧を感じ、その場を離れた。
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