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座敷に戻る道すがら、俺はたかしに訊ねた。
「あのさ、俺、芸能人になるんじゃなかったっけ?」
「ん?ああ、それね。お前確か「車学(自動車学校のこと)があるから」ってオーディション受けなかったじゃん」
「……そうだっけ?」
(確かに、車学サボってばかりで何も進んでないわ)
「まっ、お前らしいよな」
「あ、あとさ、沙紀さんどうなった?俺、沙紀さんと結婚してないの?」
「してねーし。俺もお前も未婚だよ」
「まじ?」
「沙紀さん、子供3人居るってさ。勿体なかったねー。お互い好き好き光線出しまくりだったのにね。告白すれば確実だったのに。ああいう時は、男が行かないとねー」
「そっかあ……」
胸が締め付けられるようなショック……
「俺、告白しなかったの?」
「ああ、確か車学行くって」
「また車学!?」
(車学どんだけ優先順位高いんだよ……)
「ははは!本当、お前らしいよ」
そうこうしているうちに座敷に戻った。
座敷の入り口の看板には、高校の名前とクラス、同窓会と描いてあった。
「よう!あゆむ、起きたか」
座敷の入り口でばったり会った男が声を掛けてきた。
「えっと、誰……?」
この恰幅のいいオヤジ……
「ひっでーな!高橋だよ、忘れたのか?一緒に釣りに行ったろ」
「あ、あ~。変わったな」
たまに釣りに行く仲間だ。まったく気がつかなかった。そう言われて見れば面影はある。
「いやいやいや、お前の方が変わっただろ」
「そうだよ歩くん、わたし好きだったのに」
知らないおばさんも参加してきた。何となく見たことがあるような気はする。
「はは……」
俺は苦笑いした。
どうやらドッキリでは無いらしい。
本当に20年すぎてしまったようだ……
その間の出来事が思い出せない。俺は20年何をしていたのか……
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