第1章

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高橋と見知らぬおばさんは、トイレへと向かっていった。 茫然と座敷を見渡す。 みんな楽しそうに笑っている。 なんで? 何も覚えていない。 こんなはずじゃない。俺は成功しているはずだ。 腹の底から、絶望と怒りが込み上げてくる。 「時間を返せ!」 俺は思わず口走っていた。 あてもなく一歩踏み出し、靴下と畳が滑って片ひざをついた。脚に力が入らず、俺は畳にゴロリとひっくり返った。 電灯を睨む。 「ふざけんな!納得できない!」 誰にという訳でもなく、俺は吠えた。 「こんなはずじゃない!俺の時間を返せ!」 ざわざわと声が聴こえる。 「なんだ?あゆむか?」 「まーた、ひっくり返ったか」 「歩、酒ぐせ悪いよな……」 「沙紀さーん!」 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 目を閉じて開いても、現実は変わらなかった。 周りの笑い声が、取り残された俺を嘲笑するかのように響いていた。 38、歩、成らず。 終わり
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