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窓の外では一陣の風が吹き、校庭の木が揺らいだ。パシッという音がして何かが生徒指導室の窓ガラスに当たった。
玉をしまった一ノ瀬が先に口を開いた。
「やっぱり同族だった、おまえ」
半眼で一ノ瀬を睨んだまま礼央が答える。
「何のことだかさっぱりわかんない」
礼央はわざとはぐらかすように一ノ瀬を挑発してみた。
「誤魔化すな」
再び一ノ瀬が威圧的な低い声を出した。腹の底から絞り出したような、少々寒気がするほどのバリトンだ。
睨み合いはそれから三分ほど続いた。互いに相手の目の中を覗き込み、心を読み合っているかのような睨み合いだ。その間、風が何度か騒いだ。その度に生徒指導室の窓ガラスにまた何かが当たり、パシッという音を立てた。
一ノ瀬がようやく礼央から視線を外し、フン、と鼻で笑う。
「話が早そうでよかったよ」
礼央が、フッ、と口元を緩めた。
「そうね。そのためにこの島に来たの?」
「そうだ」
と一ノ瀬が断言する。
「よかった。そっちから現れてくれて。探す手間が省けた。で? どうするの?」
挑むような目つきで礼央は教師を見つめた。一ノ瀬は決意を込めた眼差しを礼央に向けた。
「いったん帰るが元日までには戻ってくる。見落とした文献があるかもしれない。あれが封印された日付がわかっただけでも少しは役に立つ」
一ノ瀬の言葉に礼央が頷く。
「そう、そうね。リミットはわかっていた方がいい」
「おまえは引き続き、絵の在り処を探せ」
「命令口調だなあ。目上だからって」
拗ねた顔を向けると、一ノ瀬が、
「力でも俺の方が上だろう、恐らく。何分持つ?」
と礼央に訊いた。
「子供だと思って。十五分ってとこかな」
十五分と聞いて一ノ瀬が目を丸くした。
「何だ、たいしたもんじゃないか。俺もそのくらいだぜ」
はあ? と礼央が教師を斜に見る。
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