#1  決意

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 窓の外では一陣の風が吹き、校庭の木が揺らいだ。パシッという音がして何かが生徒指導室の窓ガラスに当たった。  玉をしまった一ノ瀬が先に口を開いた。 「やっぱり同族だった、おまえ」  半眼で一ノ瀬を睨んだまま礼央が答える。 「何のことだかさっぱりわかんない」  礼央はわざとはぐらかすように一ノ瀬を挑発してみた。 「誤魔化すな」  再び一ノ瀬が威圧的な低い声を出した。腹の底から絞り出したような、少々寒気がするほどのバリトンだ。  睨み合いはそれから三分ほど続いた。互いに相手の目の中を覗き込み、心を読み合っているかのような睨み合いだ。その間、風が何度か騒いだ。その度に生徒指導室の窓ガラスにまた何かが当たり、パシッという音を立てた。  一ノ瀬がようやく礼央から視線を外し、フン、と鼻で笑う。 「話が早そうでよかったよ」  礼央が、フッ、と口元を緩めた。 「そうね。そのためにこの島に来たの?」 「そうだ」  と一ノ瀬が断言する。 「よかった。そっちから現れてくれて。探す手間が省けた。で? どうするの?」  挑むような目つきで礼央は教師を見つめた。一ノ瀬は決意を込めた眼差しを礼央に向けた。 「いったん帰るが元日までには戻ってくる。見落とした文献があるかもしれない。あれが封印された日付がわかっただけでも少しは役に立つ」  一ノ瀬の言葉に礼央が頷く。 「そう、そうね。リミットはわかっていた方がいい」 「おまえは引き続き、絵の在り処を探せ」 「命令口調だなあ。目上だからって」  拗ねた顔を向けると、一ノ瀬が、 「力でも俺の方が上だろう、恐らく。何分持つ?」  と礼央に訊いた。 「子供だと思って。十五分ってとこかな」  十五分と聞いて一ノ瀬が目を丸くした。 「何だ、たいしたもんじゃないか。俺もそのくらいだぜ」  はあ? と礼央が教師を斜に見る。
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