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「ちなみにおまえの父親もその兄弟にも、それこそ湊人にも持たせてみたが何の変化も起らなかった。これを持って生まれて来た者こそ、その力を持った人物というのはやはり本当なのだろう。おまえが取れ」
半信半疑のまま礼央はそれを手に取った。見た目と同じくごつごつとしていて肌触りは決してよろしくない。だが、ずっしりとした重みがある。その重みを感じたとき信じられない現象が起こった。
龍の目がほの赤いい光に包まれたかと思った瞬間、礼央の内部で何かが弾けた気がした。腹の底が急激に熱くなり体中の血液が逆流したような不快感。不快感は得も言われぬ深い悲しみを同時に連れてきた。
それは礼央のものではない誰かの悲しみだった。何者かに憑依されそうになり礼央は慌てて龍の目を手放そうとした。が、手のひらにくっついたように離れない。
目の前で祖父がおろおろしているのがわかる。犬歯がむず痒くなり、視界から色が奪われる。ああ、自分は乗っ取られる。そう感じた瞬間、一陣の風が部屋の中に吹き、それが過ぎた途端、嘘のように静けさが戻った。
息を整え、無表情で祖父を見つめる。
「そうか、わかったぞ」
祖父が手を叩いた。
「鬼を征するために、自らも魔物になれということか」
礼央の背筋がゾっとする。自分に何が起こったのか認めるのが怖かった。だが龍の目だという玉を持ち、その重さを感じた瞬間、オカルトめいた現象が起こったのも事実だった。
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