おやすみの電話

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 残業を終えた美樹がアパートに帰宅したのは深夜十一時過ぎ。仕事疲れから思わずベッドに倒れ込んだ。 「あ、電話」  鞄の中で携帯電話が鳴っている。 「もしもし……」 「僕だ。美樹、今日もお疲れさま。毎日夜遅くまで大変だね」  社内の新規プロジェクトに選出されたのは喜ばしいが、すっかり仕事に忙殺されてしまっている。 「ちゃんとご飯は食べているのかい。毎日外食ばかりじゃないか」  以前はまめに自炊していたのだが、ここ最近は外食や惣菜弁当が増えている。栄養バランスも偏ってしまっているに違いない。そういえば鏡に映る顔色もどことなく血色が悪いような気がする。 「美樹は頑張り屋だから、僕が見守っていないと無理してしまうから心配だよ。体は大切にしないと。また電話するよ、おやすみ」  電話が切れると美樹は体を震わせた。みるみる顔が青ざめる。  --またあの男だわ--  脳裏には不気味な微笑みを浮かべるストーカーの姿が蘇ってくる。
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