出合い

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出合い

久々の休日、僕の根城のワンルームマンション。 今日は一日ごろごろしようと決めた午前八時、家の前が少し騒がしい。 ベランダから外を見ると、ああ、引っ越しか。 白熊のマークのトラックが止まってる。 僕には関係ないな。 さて、もうひと眠り。 そういや隣室が空き部屋だったなー、なんて。 ピンポーン、と、インターホンの音で目が覚める。 あれ、宅配便とかは頼んでない…ああ。隣の人の挨拶かな。 インターホンの受話器をとる。 「はい。どちらさまでしょうか。」 「あ、こんにちは、隣に越してきた-」 可愛らしい声。二十代前半くらいかな。 毎日楽しそうだ。 なんて思いは、次の一言で疑念に変わった。 「柴崎 ヌジュラモッチャラエナです。」 ヌジュラモッチャラエナってなに。 …いや、まあ、独特な名前なんだろう、うん。 「…はい、今出ます。」 ドアを開けると、名は体を表すという事実に直面した。 見間違いかな? 一度目を閉じて、軽くこすって。 目を開けると、そこには非情な現実があった。 体と頭が一体になったような、半球の何か。 そしてそこから伸びる、スキニージーンズの長い足。無駄に美脚だ。半球の頭には猫耳と円らな瞳、そしてたらこみたいな唇と…髪か?あれ。 点に真っ直ぐ伸びた、さつまいもみたいな形の黒い何か。 と、腕二本。骨格どうなってるんだ。 なんだこいつ。
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