既視感

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後輩ちゃんの家から電車で二駅。 自宅のマンションは早朝特有の空気の匂いと、静けさに満ちていた。 ワイシャツと下着を洗濯機に放り込み、新しいものに着替える。 ああ、そうだ。今日は燃えるごみの日だった。 ぱんぱんではないものの、来週までにははち切れるであろうごみ袋を右手に、書類鞄を左手に。 部屋の鍵をかけ、戸締まりをする。 まだ二つしかごみ袋の置かれてないごみ置き場に、自分の出したごみを置く。 駅へ戻る道、二軒隣さんとはち会わせた。 ごみ袋を両手に持った二軒隣さんは気まずそうに会釈し、そそくさと去ってゆく。 あの日の全責任が僕に負わされてる気がしてならない。 ヌジュラモッチャラエナさんが家から出てくる前に駅に行かなきゃ。 いつもより早足で、駅への道を急ぐ。 駅。改札はいつも通り人がずらりと並んでいて、日常が戻ってきたような感覚だ。 うん、僕はまだ大丈夫。 積み上げた日常が崩れたなら、また積み直せばいいんだ。 電車に詰め込まれ、発車のベルの音を背中で受け止める。 押し潰す、人の圧力も今日はなんだか心地よい。
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