神の住む処

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『オスに見えないし、飼い主とお揃いも微妙に恥ずかしい』 耳にリボンの飾りを付けられて見た目は可愛いけど、ちょっと無理矢理感はある。 腕を掴まれるとフッと会場近くに移動してしまい、以前と同じく車酔いみたいな気分の悪さだ。 「だから……瞬間移動する時は言って下さい、気持ち悪くなるんで」 山から一気に都会的な風景に変わり、同じ狐の世界とは思えないし狐人間というか、人にしか見えない。 私達が自分の世界で街に出かけたと錯覚する位違和感がなかった。 「ここは色んな種類の者達がおるから楽しいが、住むには騒がしすぎる」 目的地まで歩きながら朧に一通り説明を受け、ようやくどんな感じかが見えてきた。 女子会といっても『失恋した女子が愚痴を言う集い』のようだ。 内容に興味はないが、人の弱みに付け込む悪い奴は万国共通のようで、客に紛れて何かを売る輩がいるらしい。 「騙されて買う方も悪いが、ワシが気になっとるのは、便乗して本当の黒い術を売ってる奴じゃよ」 「最近その世界に居る筈のない化け物が暴れ出したり、本人の意図なく封印が解けて死者が出たり大変でさ、原因がこの集まりって掴んだところ」 「イザリ屋に依頼したんですか?」 「ここの世界も一応は内輪だし、穏便に収めたいがまずは下見を頼んでおる」 頼んでいると言いながら自らもやって来るのは、鎌イタチの芭流みたいで笑いが出そうになった。 瑠里がヘルプに入ったなら何かあったのかもしれないので、辺りを何気なく見るが大きな音もしないしイナリにも変化はない。 綺麗な洋風の建物の横には、大きな花壇と芝生の広場があり、サッカーとか出来そうな位だ。 ガーデンテーブルや敷物、食べ物が準備されていてご自由にどうぞなスタイルは私には有難かった。 人見知りな上に口下手で輪に入れそうもないし、隅の方でスイーツでも食べれたらそれで良かった。 せっかく綺麗な女性なのに、すぐに食べ物を頬張ってるのは絶対に桜舞だ。 「周りをゆっくり歩いて様子を見てきます、百合さんも楽しんでね」 声や見た目に違和感は全くないが、中身が朧と知っているので、何となく複雑な気持ちで頷いた。
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