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「あ、きなこのおはぎ……」
中に入ってるあんこが『粒あん』っぽいしモロ好みでお皿に二つ乗せ、紙コップのお茶を取り、白い椅子に座るまではよかった。
「いっつもじゃん、見た目に騙されんなって言ったのに!」
ドスが利きすぎた声に無意識に視線をやると、お茶を吹き出しそうになるのをグッと堪えた。
こちらに背中を向けてる女性も、ドス声もその友達も綺麗にパンチパーマがかかっている。
リボンやカチューシャを頭に飾り、花柄の春の装いというギャップが興味を擽る。
顔は人で毛深くもないが、骨格や彫りの深さからしてゴリラか、大猿系に違いない。
「パンチ……効いてんな」
ゴリラ女子達も小豆が好きなのか、たい焼きを山盛りにして相手の愚痴の言い合いをしていた。
「私は浮気をしたあいつにガツンと言ってスッキリ別れた」
「また背負い投げたんだ?」
「だって三股だよ~、張り倒してやった」
握力が相当ありそうな頑丈な手を見ると、普段関わりたくないような人達だが、間違ったことは言ってない気がする。
「ちょっと?一人で死にそうな顔してるけど、溜め込んでないでこっち来て愚痴れば?」
おまけに妙に姉御肌で、見ず知らずの私にまで声をかけてくれる気遣いもある。
「いいんですか?お邪魔します……」
誘ってくれたのは嬉しいが、表情があまり読み取れず、怒ってるのか歓迎してくれてるのか分からない。
「食べ物追加で持ってくる、女子の会話と言えばスイーツだもんね」
キラキラしたヘッドアクセをしたゴリラ……いや、お姉さんが和菓子を取りに行く間、ドス声の人が話かけてくれた。
「アンタ新顔だね、見たことない」
「はい、宜しくお願い……」
「ここで何度も顔合わせたくないよ!失恋の愚痴言いにくる場だから、でも友達ならウエルカムだよ」
この人達が友人ならかなり心強いし、あの引ったくりだって秒殺だ。
同じ世界に住んでないのが残念だと思ったのは初めてだし、姉さん達は普段も強そうなので尊敬の眼差しで見つめていた。
インパクトは強いが話は楽しいし、特にドス声の姉さんはサバサバした性格で好きなタイプだ。
朧や桜舞、瑠里達のヘルプの事を忘れ話に聞き入り、女子話には花が咲いていた。
お腹が痛いくらい笑いスイーツを食べ、嫌な事もすべて忘れそうな素敵な時間を過ごせ、こちらの世界もいいかもと笑顔で話を聞いていた。(完)
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