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「百合はパン大好きだし、小豆も好きでしょ?将来は商品開発とかに携われると定年まで安泰なのにね…」
「いや、無理だって。工場の人がそんな簡単に事務方には回れないよ」
「でも百合達は品質管理部なんでしょ?チャンスはゼロじゃないかも」
やはりパンフレットを見ておいて正解だった。
たまに会社の事を聞かれた時に、答えるのにタジタジになるし瑠里みたく上手にいい訳も出来ない。
家族にもイザリ屋の事は話せないので、この猿芝居を続けるしか道はない。
これ以上質問されたくなくて、無意識に歯を磨きを始め、服を着替えていた。
「ねぇ百合、クリスマスケーキの予約の用紙まだ貰えないの?楽しみに待ってるんだけど」
「どうせ生クリームのホールでしょ?決まってるじゃん」
「見るのが楽しみなの!新作もチェックしたいし、注意しておいてね」
これ以上居て色々聞かれても嫌なので、渋々職場に向かう事にした。
母には『仕事のやり残しがある』と適当にいい訳をつけて靴を履く。
いつものように受付には笑顔の木村さんが居たが、瑠里と時間差で来ているので『あれ?』という顔をしている。
「ちょっと瑠里が気になって……」
着替えを受け取る際にいい訳がましい理由をつけたしておいた。
「いいわね、姉妹って」
美談と勘違いしてくれた木村さんにホッと胸を撫で下ろす。
母に仕事の質問されケーキの催促もウザいので、嫌々来ましたとは絶対に言えない。
指示されたトレーニング室のドアを開けると、瑠里とイナリが動いていたが、どうも様子がおかしい。
さっさと先に進めばいいのに、何かを拾ってる素振りを見せていた。
「何……やってんの?」
「その声は姉さんも来た?このゲーム、回復薬取れるのに気付いたから集めてるとこ。持てる数決まってるし武器も置いて来た」
「アホか!そんな事に時間を費やすなら敵と戦えや!」
ゾンビゲームをやる時も『アイテム狩り』と名前をつけて回復薬を集める時間を設けている。
アイテムスペース確保の為に武器を置くので、ゾンビに出くわすと攻撃され、体力が減るという無駄なうごきを絶対に止めようとしない。
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