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社長室の外が騒がしくなり、ノックが鳴りやむ前に扉が開かれる。 「芽衣、ここにいたか」 矢部が一番に入ってきて、そう言った。 そこにすかさず銀が口を挟んだ。 「だーかーら!俺がさっき言っただろうが!!芽衣さんは社長室に行ったぞって!」 「…………」 「おい、こるぁ、矢部!無視すんな!」 「はぁー。……銀、てめぇはぎゃーぎゃーうるせぇんだよ。いい歳なんだからもう少し落ち着け」 矢部がそう言い放つと、銀は徐々に目を見開いて固まった。 「……あれ?銀ちゃーん?おーい」 ライトが銀の顔の前で手をひらひらと振る。 「いいから、しばらくほっとけ」 矢部はひらりと手を後ろ手に降り、芽衣の所へ歩いて行った。 「芽衣、休憩時間だ」 大きな手がポンと芽衣の頭に乗る。 それとほぼ同時に、社長室のドアが勢いよく開いた。 「皆さん、お疲れ様です」 入ってきたのは心羽と華で、小さい影が部屋をかけ抜ける。 そうして、 「めーい!」 可愛い声がすると同時、芽衣の足にぶつかった。 「わわっ、小虎。飛びついたら危ないよ?……って、うわっ、」 「めーしゃん!」 二発目がぶつかる。 大虎の息子の虎太郎と、ライトの娘の愛華だ。 芽衣がしゃがむと二人が飛びついた。 「小虎、危ないってば、」 苦笑しながらそう言った芽衣に、虎太郎が首をぶんぶんと横に振る。 「こ・た・ろ」 「ふふっ、虎太郎、だね」 「うん!」 腕には愛華がしがみつきじゃれる。 大人たちがそんな小さな二人を見つめ、目を細めた。 「虎太郎も愛華も、芽衣に懐きすぎだろ」 矢部が苦笑を洩らす。 芽衣は矢部を見上げて、嬉しそうに微笑んだ。 「可愛いから、いいんだよねー?」 「ねー!」 「ねー!」 「おーっし、虎太郎、愛華!銀ちゃんが遊んでやるぞー!」 いつの間にか復活していた銀が両手を広げてしゃがんだが、2人とも思い切り首を横に振って、ますます芽衣に抱きついた。 「やだ!めい、だっこ!」 「だっこ!」 二人が芽衣の首にしがみつく。 芽衣は両手で二人を抱くと、足に力を入れた。 「…………っ、あ、だめっ!腰!!!」 途端、矢部が芽衣の腕からひょいと二人を抱き上げて、近くにいた大虎とライトが受け取った。
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