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個室のあるオシャレな居酒屋。
芽衣に矢部、大虎、ライト、ブシと銀はグラスを持ちあげると口の端を持ちあげる。
大きな商談が無事まとまり、飲みに来ていた。
「銀、」
大虎の一声で、銀が白い歯を覗かせる。
「えー、こほん。お集まりの皆様、お疲れ様です!では、かんぱーい!」
「カンパイ!」
グラスが持ち上がり、ぶつかる音が重なった。
「――っ、……っつーか、矢部は今回の仕事にあんま関係ねーよな」
「銀。てめぇはわかってねぇな」
銀の言葉に矢部が片眉を持ちあげて、眼鏡の奥を鋭くした。
「んー?」
グラスに口をつけたまま銀が視線だけで矢部を見ると、矢部はギロリと銀に視線を送りながら口を開いた。
「俺がてめぇらの体調管理をしてやってるおかげで、仕事が滞りなく進むんだろうが」
「俺、体調管理は自分でしっかりしてるぞ?鍛えてるしな!」
「どうだかな。酒の飲み過ぎで肝臓は大変なことに……」
「は!?うそだろ!?おい、矢部!」
「……なってるかどうかは、検査次第だが」
「…………うーわー……俺今、すげー焦ったー」
銀をからかいながら矢部が楽しそうにグラスを傾ける。
運ばれてきたおにぎりを手に、もう一皿注文した。
ライトが不意に口を開いた。
「そう言えばさ。俺、ずっと聞きたいと思ってたんだよね」
全員の視線がライトに向くと、意味深に口の端を持ちあげた。
「ヤブっち達って大学で知り合ったんでしょ?俺とトラちゃんも秋花大だったけど、医学部棟は離れてたし、2人ともどうやって知り合ったの?」
楽しげに、そして興味津々なのを何気なくを装い隠している。
そんな周りの雰囲気に笑いながら、芽衣は思いだすように宙を眺めた。
一番最初は……、
店の雰囲気や景色を思いだし、ハッと矢部を見上げた。
「もしかして、ココ?」
「ククッ、あぁ。よく覚えてました」
矢部の大きな手が後ろから頭の上にポンと載る。
ふわっと微笑んだ芽衣の背中を撫でおろした。
「ココって、この店?」
「うん。酔っぱらった私が、理人に激突したんだよね」
くすくすと笑いながら、懐かしそうに目を細める。
その後大学に行ったら矢部とバッタリ会った事をかいつまんで話をすれば、ライトが柔らかく顔を崩した。
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