七夕SS

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「これはいったい……?」   芽衣は『Shibasaki』ビルに入ったところで足を竦ませた。 受付もある玄関ホールは、広々とした中に立つ柱のそばにベンチ。 いつもはたったそれだけのシンプルなそこに、ついさっきまでなかったものがある。 ただただ見上げる芽衣の傍らに、ちょうどエレベーターから降りてきた大虎が立ち止まった。 「芽衣さん、」 「あ、大虎さん、これは……」 芽衣の視線を追うように大虎もそこへと目を向ける。 そしてじっと見つめた後、小さく笑うと口を開いた。 「光輝の仕業だ」 “ライト”とは呼ばず敢えて光輝と言った大虎に、芽衣はようやく驚いた顔を笑みに変えた。 「ウチにしては賑やかですね」 「それに関しては心羽と華の管轄だ」 二人じっと見上げていると、もう一人エレベーターから降りてきた。 「芽衣、お帰り」 「理人。ただいま」 矢部が白衣を翻し歩いてくるとするりと芽衣の頬を撫でた。 「早くしろと銀がうるせぇ」 「どこかに行くの?」 「『ciel』だ」 呆れた笑みで芽衣の肩を抱くと回れ右をさせる。 そのまま『ciel』に入るといつものメンバーが笑顔で迎えた。
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