七夕SS

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「芽衣さん!芽衣さんも急いでくださいね」 芽衣が華に渡されたのは、短冊。 さっき芽衣がぽかんと見上げていたものは大きな笹で、色とりどりの飾りがたくさん飾られていた。 「七夕って6日の夜中から7日にかけてなんですって!」 だから、早く。 今日はすでに6日の夕方だ。 芽衣は手にした短冊を見つめ、うーんとうなった。 「願い事は決めたか?」 矢部が芽衣をのぞき込むが、手にした短冊には何も書かれていない。 不思議そうにした矢部を見上げ、芽衣は困ったように笑った。 「特にないのよね。理人は?」 「『一日を48時間にしろ』だ」 「…………。心羽ちゃんは?」 「私は『人見知りを治したい』です。華ちゃんは?」 「『家の家具小物全部をお気に入りの雑貨でそろえたい』です」 「なんだ、華。それなら今度の休みに……」 「て、光輝さん!ダメです!!こういうのは少しずつ、少しずつ、なんです!」 「そうなの?一気にそろえたらいいのに」 光輝の言葉にうなづいたのは、大虎と矢部。 愛しい妻のおねだりなら何でもかなえてやりたいと思う。 しかし、それを見た芽衣と心羽、華は顔を引きつらせた。 この男たちに安易に欲しいものをいえば買ってきかねない。 こういう願いはそういうことではないのだ。 芽衣は手にした短冊を見下ろして、ようやくペンを手に取った。 『織姫と彦星がずーっと一緒にいられますように』 ~七夕SS(’17.7.6追加)~
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