783人が本棚に入れています
本棚に追加
「芽衣さん!芽衣さんも急いでくださいね」
芽衣が華に渡されたのは、短冊。
さっき芽衣がぽかんと見上げていたものは大きな笹で、色とりどりの飾りがたくさん飾られていた。
「七夕って6日の夜中から7日にかけてなんですって!」
だから、早く。
今日はすでに6日の夕方だ。
芽衣は手にした短冊を見つめ、うーんとうなった。
「願い事は決めたか?」
矢部が芽衣をのぞき込むが、手にした短冊には何も書かれていない。
不思議そうにした矢部を見上げ、芽衣は困ったように笑った。
「特にないのよね。理人は?」
「『一日を48時間にしろ』だ」
「…………。心羽ちゃんは?」
「私は『人見知りを治したい』です。華ちゃんは?」
「『家の家具小物全部をお気に入りの雑貨でそろえたい』です」
「なんだ、華。それなら今度の休みに……」
「て、光輝さん!ダメです!!こういうのは少しずつ、少しずつ、なんです!」
「そうなの?一気にそろえたらいいのに」
光輝の言葉にうなづいたのは、大虎と矢部。
愛しい妻のおねだりなら何でもかなえてやりたいと思う。
しかし、それを見た芽衣と心羽、華は顔を引きつらせた。
この男たちに安易に欲しいものをいえば買ってきかねない。
こういう願いはそういうことではないのだ。
芽衣は手にした短冊を見下ろして、ようやくペンを手に取った。
『織姫と彦星がずーっと一緒にいられますように』
~七夕SS(’17.7.6追加)~
最初のコメントを投稿しよう!