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「とりあえず……自己紹介からいきますか」
目の前に並ぶ男達はお互い顔を見合せながら、探るようにそう言った。
テーブルの一番入口に近い所に座った芽衣は、心の中でため息を吐きだした。
一番最初のこの雰囲気が嫌なのよね。
知らない人たちとテーブルを囲む事に疑問を持ちつつ視線を上げれば、目の前に座った男がニコッと笑った。
一番奥に座る男から自己紹介が始まる。
芽衣の隣には沙織が座っていて、その向こうにはもう2人、同じ学科の女子が座っていた。
男女交互に始まった自己紹介。
芽衣は途中、しまった、と視線を泳がせた。
男達の名前をさっぱり聞いていなかった!
お腹がすき始めていたせいか、早く料理を出せとばかり考えていた。
「えーっと、松村沙織でぇす!沙織でもさおちゃんでも好きに呼んで下さーい」
隣から聴こえた声は本当に沙織のものか。
芽衣は顔をひくりとさせて、一瞬ちらりと視線を沙織に向けた。
信じられない程満面の笑みだ。
流石、狙ってた医学部が相手だとこうも違うのか。
普段、同じ学科の男子相手でもここまでではないと芽衣は思う。
視線を泳がせると、同じように瞳を揺らした向かいに座る男子と目があった。
「っ、あ、次、俺か。前野雄太です。沙織と幼馴染で、この合コンのセッティングをしました」
前野雄太は体育会系の風貌で、日焼けした肌に白い歯がきらりと光った。
なるほど、この人が沙織の幼馴染か。
芽衣がじっと見つめていると、雄太は照れたようにはにかんで、首をかしげて見せた。
ま、眩しい。
芽衣が目を細めると、隣の沙織が肘で脇を突いた。
「っ!ちょっ、」
「芽衣、次、最後、アンタの番よ!」
耳打ちされた言葉に顔を上げると、全員がこちらを向いている。
芽衣は機械的に口を開いた。
「皐月芽衣です」
「あ、君がめいちゃん、ね。おっけー」
一番奥に座る男がにこにこと笑い、他の男達も微笑んで頷いてくれる。
それになんとなくぺこりとお辞儀をしたら、沙織が耳元で囁いた。
「期待通りのイケメン揃い!」
沙織の目が野獣化している。
芽衣は沙織に乾いた笑いを洩らしながら、運ばれてきた飲みものをテーブルの奥へとまわした。
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