17年前

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既に何杯目だろうか。 芽衣は目の前のグラスをじっと見つめ、それからぐいと残りを喉に流した。 目が据わってきたのが自分でもわかる。 気がつけば向こうの女子2人は、その向かいに座る男子と随分仲良さげに話しこんでいて、仕舞いに、たった今、1人ずつ席を交代したところだ。 沙織は自分の向かいに座る男と楽しげに談笑中で、その目は確実にロックオンされていた。 ふと自分の目の前に視線を向ければ、沙織の幼馴染の雄太がにこにこと自分を見つめている。 爽やかな笑みがやはり眩しくて目を細めると、雄太はおもむろに手を伸ばし、芽衣の髪を撫でつけた。 「っ!?」 「……髪、絡まってたから」 「あ、あり……がとう」 「いや……って、あ、えっと、ごめん。急に触られたら嫌だよね」 困ったように笑う雄太に芽衣は小さく首を振った。 嫌ではなかった。 むしろちょっとキュンとした。 顔が熱い。もしかしたら顔が赤くなってしまったかもしれない。 だがしかしちょっと待て、芽衣よ。 店員が運んできた新しいグラスを見て、慌てて急ブレーキをかけた。 お酒のせい、お酒のせい。 早まるな、冷静になれ。 芽衣がフッと真顔に戻したため、雄太はキョトンと見つめてからフッと息を洩らすように笑った。 「芽衣ちゃん、やっぱり可愛いね」 「…………は?」 芽衣は突然の褒め言葉に、ぽかんと口を開けた。 「前にね、沙織と歩いてる所見かけたことあったんだけど……」 言ったきり口をつぐんでしまった雄太に、芽衣もまた開けたままの口を漸く閉じた。 こういう場合はどうしたらいいの……かしら? 照れくさそうに頬を染めて視線を落とした雄太に、芽衣もまた照れくさくなり、あわてて腰を上げた。 「ちょっとお手洗い」 「あ、うん」 そそくさと個室をでる。 あー、びっくりした。心臓ドキドキいってる。 ふらふらした足取りだが、頭の中は冴えていた。 そういえば、沙織がそんな事言ってたかもしれない。 連絡先聞かれたら……どうしよう。 あまり知らない人には教えたくないんだけどなぁ。 あ、でも雄太くんは沙織の幼馴染だし、大丈夫かな。 まだ聞かれもしていない事を考えながら、ふらふらと手洗いから出たところで。 目の前が突然真っ暗になった。
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