眠りゆくままに

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私は穴の空いた土の中にいる。私の両手にそこに入れる愛しい存在がそこにいた。 私と彼女が出会ったのは今から十一年前のことだった。 当時の私は自分の生きる意味が分からなかった。 家の中では両親が口喧嘩。 どちらかが何らかの事情でいないと、私にイラつきを親はぶつける。 学校ではクラスメイトにイジメを受けていた。 原因は分かりたくもなかった。 話を聞いてもらえる人もいない。 それでも学校に行く。 そう、そんな惨めな小学五年生だった。 彼女はそんな私を弱った体で近づいてきたのだ。 か細い声で私に助けを呼ぶかのように。 私は震えるその体を抱きしめてあげた。 「この子だって頑張って生きてるんだ」と私は心の中で呟いた。 その子は私の頬を軽く舐めた。 しかし……。 「あんた、何持ってるのよ?」と母親。 「そんないらない物は捨てろ。元から捨ててあったものだろ?」と父親。 二人の荒らげた声で彼女は震えていた。 私はそんな彼女の耳に「大丈夫だよ、私が守ってあげるから」とささやいて彼らに伝えた。 「あんたたちは子猫一匹も飼えないの?そんなことなら私はこの子を連れて出ていくわ!!」 「勝手にしろ」と父親が言う。 母親は黙って首を振るだけだった。 私は彼女を抱えたまま外を出た。 着替える服も持ったないまま……。 外に出た私の行く場所なんてなかった。 寂しげな風がさり気なく吹いてくる。 私は公園に着いた。かまくら型のドームに入る。 「寒いよね……」と私は子猫に話しかけた。 私のジャケットの胸元に子猫を入れる。チャックが邪魔にならないようにしてあげた。 「ごめんね」と呟くと彼女は私の頬を舐めた。 しばらく時間が経った頃、私を探す両親の声がした。 私は両親の顔を見たくないがためにそこから出なかった。 だが、両親は細かく捜していたので私たちは見つけられてしまった。 怒られると思っていたが、二人に力強く抱きしめられた。 そして「ごめんね」と二人に言われた。 子猫を飼うことも許された。 そう、これが彼女と私の出会いの始まりだった。
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