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「僕らの専門じゃないですね。」
窓の隙間から店の中を覗いた悠真が、そっと呟くように言う。
「僕らの専門って?」
その足元で、しゃがんだままの柊平が夜魅に小声で訊く。
「悠真は柊平よりも先輩なんだよ。」
答えのようでそうでもない夜魅の返事に、柊平はなんとなくムッとした。
歳はたぶん変わらない。
しかし、壮大朗が認める専門家で、夜魅まで柊平より先輩だと言う。
「先輩も何も専門が違いますから。」
窓から離れた悠真の言葉が、頭の上から降ってきた。
「うちは付喪神専門や。悠真が違うゆーんやったら、中のタヌキは付喪神以外のもんやゆーことやな。」
コマがなんだか偉そうに言う。
「残念。付喪神だったら連れて帰って貰おうと思ったのに。」
「これでこないだの追加料金はチャラやからな。」
「分かってるよ。」
コマと夜魅が睨み合っている。
どうやらこの2匹はあまり仲が良くないらしい。
「なぁ、付喪神って何なんだ?あのタヌキが付喪神だと、何か問題があるのか?」
柊平は、コマを威嚇する夜魅を摘み上げる。
「付喪神は、簡単に言うと、長い間使われた道具に魂がやどって妖怪になったものです。」
コマを宥めながら、悠真が説明する。
「昔は百鬼夜行の中心は付喪神だったんだけど、最近は本体から切り離すと器ごと消えちゃうんだ。だから、今のところ付喪神は百鬼夜行路を通せないんだよ。」
摘まれたままの夜魅が、悠真の説明に付け加えた。
昨夜、夜魅が中身次第だと言ったのは、こういうことだ。
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