姿

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「じゃあ、依代なのか?」 バッサリ倒れた棚。 真っ二つの壺。 犯人は、中にいる焼き物のタヌキとしか思えない。 「でも、記憶がないんですよね。」 「せやったら、中身は小物で、器が上等な可能性の方が高いんとちゃうか?」 悠真とコマのコンビが口々に言う。 「なんでさ。小物にあんな派手なこと出来るわけないでしょ。」 それに異を唱えたのは夜魅だ。 夜魅は柊平と同意見らしい。 「それ、確かめる方法あるか?」 それぞれが言っていることの理由は分からないが、とにかく正体が分からないことにはどうしようもない。 柊平の言葉に少し考えた悠真は、コマに石を拾って来るように言った。 「試してみましょう。」 コマが拾ってきた石を、悠真は柊平に渡す。 「試す?」 直径5センチほどのそこそこの大きさの石を、柊平は怪訝な顔で見る。 「鍵、貸して下さい。僕が戸をあけますから、柊平さんはそれをあのタヌキに投げて下さい。」 「そんなことしたら、割れるだろ。」 見た目の割りに過激な発言に、柊平は思わず当たり前過ぎる返答をしてしまう。 「依代なら、あの棚を壊した力が使えると思います。違うなら、本人の意思では使えないでしょう。」 「百鬼の若さんが投げた石は、悪鬼にとってはただの石やない。避けずにはおれん。」 柊平は夜魅を見る。 「でも、狙うところは考えてあげて。もし小物だった場合、中心に当たると消滅しちゃう。」 悔しいが、どうやらこの中で1番無知な自分。 それなのに、何やら無理難題を吹っかけられているような気がする。 柊平は、古くすすけた鍵を悠真に渡す。 こないだの紅狐の光は胸のあたりにあった。 中に何が居るのか知らないが、狙うなら…。
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