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「悪かったよ。」
柊平は、瞬間接着剤で焼き物のタヌキの耳を接着している。
「謝ることないよ。お前、これはどういうことだよ。」
夜魅はバッサリ裂けた棚の前で、耳を接着中の焼き物のタヌキを見上げる。
「それが、よく分からんのです。綺麗な壺だと思って手にとって見ようとしたのですが、それがパックリ割れてしまって。」
真っ二つになって転がる手のひらほどの壺を、柊平と夜魅は見つめる。
「それにびっくりして…棚に激突してしまって。」
「ん?棚はお前が突っ込んでこの状態か?」
タヌキがションボリする。
柊平も夜魅も、タヌキが何か得体の知れない力で、この分厚い木製の棚を破壊したのだと思っていた。
しかし、何か得体の知れない力が働いたのは、綺麗に真っ二つの壺だけだと言う。
柊平は真っ二つの壺を拾い上げ、しげしげと見つめる。
ごしゃっと裂けた棚と違い、その切り口は綺麗だった。
「手にとったら割れた…か。」
「スッパリかぁ。」
夜魅もその切り口を見上げてポツリと呟く。
そのあと、その日は散乱した古い雑貨を拾い集め、バッサリ裂けた棚を片付け、店先を掃除することに、残りの時間を費せざるを得なかった。
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