姿

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「ちょっと待て。じゃあ、あの焼き物タヌキが記憶喪失な原因て、オレじゃないのか?」 周囲にそれらしい力を発散するものはないが、吹っ飛ばされて記憶のない妖怪。 現れたのは、前回百鬼夜行路を開いてすぐ。 「うーん。可能性が無いとは言えないけど…。」 「とりあえず、あの空き地周辺を探してみるか。」 「小物なんだから、切り離して百鬼夜行路に連れて行ったらいいじゃん。」 面倒くさそうに夜魅が言う。 「じゃあ、後に残るであろう焼き物のタヌキの置物はどうするんだ。」 どう考えても、どこかのお宅からやってきたとしか思えない。 特別騒ぎになっている様子はないが、夕方ほんの少しいるだけの柊平には、ご町内の噂までは聞こえてこないだけかもしれない。 「あのぅ。」 さっきまで店の隅っこにいた焼き物のタヌキが、上がり口まで来て、おずおずと口を開く。 「昨日、石を投げられてから、ちょっとづつ記憶らしきものが戻ってきたのですが。花が咲いておりました。薄桃色の可愛らしい花が。」 「花?そのタヌキがあった場所にか?」 「おそらく。最後に見たのは、この目の穴からですが、わたしはそこに居たような気がします。」 柊平には秋のこの時期に咲く、薄桃色の花に心当たりがない。 「夜魅?」 起き上がり伸びをする夜魅は、どこかへ行く気らしい。 「柊平、行くよ。」 夜魅はそう言って、戸を開けるように柊平を急かした。
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