姿

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「カミソリか。」 柊平は真っ二つの壺を思い出す。 「決まりじゃないかな。」 人通りのない歩道を祖父の店に戻りながら、柊平と夜魅は話す。 「足跡とか、ホント、何考えてるんだあのタヌキ。」 誰も彼もがあの老婦人のようにおおらかではない。 ただ、仲間があれだけいるなら、あの器から出してやれば百鬼夜行路へ行く必要はないかもしれない。 「今夜はやめときなよ。」 「なんでだよ。」 考えていることを読まれたようで、柊平はなんとなく気分が良くない。 「たぶん、中にいる奴には戻る場所が無いよ。」 夜魅の声は硬い。 枯れかけの1株が、柊平にも思い出される。 明日は金曜日。 明日なら、焼き物のタヌキの中身がどんな選択をしても応えられる。 「じゃあ、明日の夜だ。」 柊平は長いため息のあと、そう一言告げた。
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