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「夜魅、火種はどうやったら明るくなるんだ?」
四畳半で菓子箱サイズの箱を開けると、豆粒くらいの提灯が入っていた。
火種は、米粒くらいだ。
元の姿に戻った親指タヌキは、さっきまで入れなかった四畳半に、夜魅の頭に乗ったままでいる。
「柊平が息を吹きかけて。」
うなづいて、フッと息を吹きかけると、小さな灯りがポッと灯る。
豆粒くらいの提灯を親指タヌキに持たせると、その小さな灯りをその中に落とした。
柊平は、足早に中庭に出ていく。
中庭の中心にある小さな池の水面には、今夜もチラチラと百鬼夜行路から明かりが洩れている。
前回と同じように、撫で斬りを鞘から抜かずに、その光の中にちゃぷんと浸けた。
波紋が徐々に大きくなり、光の揺れていた部分が満月のように真ん丸の光になる。
夜魅はそれを確認すると、柊平を見上げた。
柊平は、池の畔にある飛び石に正座する。
「どうぞ。お通りください。」
丁寧に告げられたその言葉に、親指タヌキは恭しくお辞儀をすると、何かを呟いた。
「ありがとうございます。よろしくお願いします。だって。」
夜魅が通訳する。
「長く待たせて悪かったな。」
もしかしたら、早く気付いていれば、仲間達と一緒にいられたかもしれない。
柊平が謝ると、親指タヌキは力いっぱい首を振った。
「じゃあ、行ってくるね。」
夜魅はそう言い残すと、豆粒くらいの提灯を持った親指タヌキを頭に乗せたまま、百鬼夜行路へ飛び込んで行った。
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