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翌日早く、四畳半で眠りこんでいるところへ夜魅が帰ってきた。
「寝ないで待ってたの?」
座ったまま舟をこぐ柊平に、夜魅が声をかける。
「あぁ、おかえり。」
厳密には、ほぼ寝ていたが…。
昨夜、夜魅が百鬼夜行路へ向かったあと、入口がどうなるのか、ずっと見ていた。
入口は夜魅が通り抜けてしばらくすると、ゆらゆらと揺れて、また小さな光の波に戻っていった。
そのまま入口は朝まで開くことは無く、夜魅はどこからともなく帰ってきた。
「お前、どうやって帰ってきたんだ?」
ちゃぶ台に頭を乗せたまま、半目の柊平が訊く。
「ちゃんと1回寝たら?」
「聞いたら寝る。」
「百鬼夜行は、ヒビ割れだらけなんだよ。だから、適当にここの近くのヒビ割れから帰ってくるの。ここに訪ねてきたり、百鬼夜行路の事を知ってる妖怪は、大体そのヒビ割れからウッカリ落ちてきたやつ。」
思っていたより物騒な話のような気がする。
何か言いかけたが、柊平はそこまで聞くと、そのまま規則正しい寝息を立て始める。
昨夜は随分と集中力がいっただろう。
今日はどのくらい眠るだろうか。
夜魅は部屋の隅に丸めてあったブランケットをひきずってきて、ちゃぶ台に突っ伏して眠る柊平に掛けてやる。
「そう言えば、仲間達をよろしくって言ってたよ。」
次の週末、親指タヌキの一団が百鬼夜行路の前に列をつくるが、それはまた、別のお話。
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