姿

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「…タヌキだな。」 「タヌキだね。」 敷居の向こう、狭い間口を塞ぐように立っていたのは、大きな焼き物のタヌキだった。 「失礼致します。百鬼夜行路へお通し願います。」 焼き物のタヌキの口元だけが、カクカクと動く。 柊平は出入口の脇の窓から顔を出し、周囲を確認する。 冷たい秋の夜風が隣家の南天の枝葉を揺らす以外は、周囲で動くものはない。 「とりあえず、中へどうぞ。」 窓を閉めた柊平が焼き物のタヌキに言う。 「柊平、なんだか分からないものを招き入れるのはどうかと思うけど?」 夜魅が言うが、焼き物のタヌキは器用に体の向きを変え、横向きに狭い間口を抜けた。 「それこそ、何だか分からないしゃべる焼き物を外に置いとけないだろ。」 柊平は後ろ手にガラガラと戸を閉め、念のため鍵をかけた。
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