姿

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「百鬼夜行路って、焼き物も通れるのか?」 タヌキの焼き物が四畳半との段差をこえられないため、柊平と夜魅は上がり口に座った。 「百鬼夜行路に現世の物で持ち込めるのは、足元を照らす提灯のみだよ。」 白い狐が、大事そうに持っていった相方の灯りを思い出す。 「わたくしは、通れないのですか?」 柊平と夜魅の言葉に、焼き物のタヌキが残念そうに訊く。 「中身次第なんだけど…。」 夜魅は首を傾げながら、目の前に立つ焼き物のタヌキを見上げる。 「こういう妖怪じゃないのか。」 柊平が不思議そうに焼き物のタヌキを眺める。 焼き物で有名な産地で焼かれたと思われる有名なモチーフの、立派な焼き物。 確かに、夜魅やこないだの紅白狐と比べると違和感がある。 気配が二重に見えるというか、2つあるというか。 「君は何者?」 夜魅が訊く。 しかし、焼き物のタヌキは首をかしげてしまう。 「それが、よく覚えていないのです。」 「覚えてない?」 柊平と夜魅は顔を見合わせる。 「気付いたらこの姿でした。途方に暮れていたところを、風の噂で百鬼夜行路のことを聞いてこちらに参りました。」 「夜魅、このまま百鬼夜行路を通ったらどうなるんだ?」 「とりあえず、現世の物は形を保てないと思うよ。」 柊平の問に夜魅は少し考えてから答える。 「じゃあ、中身が出てくるのか?」 自分のことを覚えていないなら、それで解決するような気がする。 「たぶんだけど、現世物と切り離してからじゃないと、一緒に消えちゃうんじゃないかな。」 夜魅の言葉に、今度は柊平と焼き物のタヌキが顔を見合わせた。
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