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壮大朗がひと息つくのを待って、柊平は質問を続ける。
「座敷に上がれないのは、なんでだと思う?」
「ワシに分かるのは、撫で斬りがそのタヌキが百鬼夜行路へ近付くのを嫌がっておるようだというくらいじゃな。」
「嫌がってる?じゃあ、あの刀が家の中で境界をひいてるってこと?」
柊平が渋い顔になる。
よく切れる刀が嫌がる相手。
何か自分には分からない悪いものなのだろうか?
「ふむ。そう怖い顔をするな。恐らくだが、そのタヌキは百鬼夜行路を通るべきでないか、もしくは今のままでは通れないかということじゃ。」
「なら、その条件をクリアすれば、あのタヌキは百鬼夜行路へ通せるかもってこと?」
「そうなるのう。だが、例外もある。お前も夜魅も、はっきりせんようなら専門家に頼んでみるかのう。」
「専門家?」
今のところ、1番頼れる専門家は祖父だが、その祖父が言う専門家とは。
「こないだ会ったじゃろ。例の常連客じゃよ。」
柊平は、先日の夜中に会った不思議な雰囲気の少年を思い出す。
「あいつが専門家?」
歳は自分と変わらないと思うが、どういうことだろうかと首を傾げる。
「ワシから連絡しておこう。とりあえず、店へ行ってくれんか。」
「わかった。」
柊平は学生鞄を抱えると、丸椅子を元の場所に戻して病室を出た。
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